「チェンジリング」 (ネタバレあり)


まさに、「チンコは口ほどに物を言い」


っていう崇高な映画でございました。

世間でかなり評判良いので期待したんですが、自分にはよくわからんかった。
特に、腐敗した権力に対峙する社会正義の構図があまりに紋切り型で萎えた。

悪い奴は単純に悪いし、片や、元々変質者専門だったジョン・マルコビッチ人権派の牧師として速攻でジョリー様を助けに精神病院に乗り込んじゃうし。史実に基づいているらしいが却ってそれが邪魔してる。
ジョリー様は「17歳のカルテ」ですでに入院してるから、薬を飲むフリしたり闘うすべは心得ているのだ!
僕は「カッコーの巣の上で」とか見てるし、当時のLAPDの腐敗ぶりは「LAコンフィデンシャル」とかいろいろあるので正直たいしたインパクトないし。

それよりも、ゴードン・ノースコットのブレ具合が世の不条理の象徴のようでズシリときました。
特に絞首刑の長い描写でジョリー様に何もさせずにゴードンを逝かせちゃったあたりはさすがイーストウッド
13階段がどうたら言ってたけど、告白証言した少年と同様に、善悪どちらの側もカトリック的倫理観が支配しているところが深いなーとか思ったり。

こじつけ的に思うのは、「ミスティック・リバー」でショーン・ペンの背中に十字架タトゥーがあったように、イーストウッドはずっと運命(というかキリスト教的世界観?)の不条理にこだわってんじゃないのかと。

例によって淡々と引いた目線で描写してるからSじゃねーの?と思いますが、ここまで救いのない話をやるところをみると、清濁併せ呑みまくりというか実はドMダーティーハリーに違いありません。

そんなこんなで、母の愛とか、女の強さとか社会正義とかはどっちかつーとジャマでした。もう自分勝手に「殺人の追憶」とか「ゾディアック」なモードで観ていたんです。

だから揚げ足取りばっかで、自分のガキじゃなかったら熱湯かけたり生爪剥がしたり、ジャック・バウアーなら1分で吐かせられるっちゅーの!どんだけお人善しなんだよ!!とか思ってました。

余談ですが、警察本部長は悪役得意のコルム・フィオーレでしたが、「24」のシーズン7では女性大統領の夫として、息子の死の真相を探ろうとして○○○○るという珍しく誠実キャラ。
対する社会派弁護士ジェフ・ピアソンはシーズン1の大統領。「ゲット・スマート」では副大統領でした。二人ともその残像が強くて普通に見れんかった。。。

それでもやっぱりイーストウッドはさすがでした。特に音楽。「LA・・・」や「チャイナタウン」のようなトランペットの哀愁テーマに一発でやられ、オープニングでまだ電話交換台のシーンなのにすでに胸が締め付けられてた。

この後に「グラン・トリノ」もすぐ公開だそうな。。。すごいおじいちゃんだね。(☆4つ)