ユナイテッド93

chef72006-08-19


予告編で「ワールド・トレード・センター」やってたが、お涙頂戴ミエミエで予告編だけで辟易した。(オリバー・ストーンじゃん!?)これも同じだったらどうしようと思ったが、杞憂でございました。
隣りはバカそうな中年夫婦(ウチもぢゃ!)で、最初の頃こそベチャクチャしゃべりやがってコラタコ!(by長州力)でございました。しかし映画も中盤以降は場内は静まりかえり咳ひとつできない状態。これで座席シートが振動でもしようものなら富士急ハイランドでもトップ級なヴァーチャルライドとなるはずだ。
この映画は擬似ドキュメンタリーなのでまさにヴァーチャル体験マシン。ほとんどドラマらしいドラマを挟まずに進行して最後はブラックアウト。ほんと終盤は息継ぎするのも苦しいぐらい。
ポール・グリーングラスは「ボーン・スプレマシー」でも揺れるカメラと細かいカット割りで、どんな編集してんねん!と思うほどのやらしいドキュメント調でございました。今回も、引いたところから動かして盗撮風視点を作ったり、管制センターで別に動かさなくてもいいじゃんってとこで揺らしたり、常にカメラは止まってません。
見終わってぐったりしてしまったが、観客の誰もが画面に金縛りになってしまったように、逆説的に上級のエンタテインメントになってるわけで、リアル体験を迫る擬似ドキュメンタリーの危うさを感じたりもする。9.11のことについてはいまだに真相が解明されていない。さまざまな陰謀説も出ているなかで、電話でやりとりした家族への取材とボイスレコーダーの記録などから一つの結論を作ってしまったのはどうかと思う。これで事実と大きくかけ離れているのなら、泣かせのベタベタメロドラマの方がマシなのかもしれないとも思う。
やけに軍のヘタレぶりが強調されてるけど、残骸の証拠品からは空中爆発説も根強いし、まっさきにでしゃばるはずの軍が後手後手になって手をこまねいてる描写はどうにもアヤシイ。もともと自作自演じゃないの?と思ってたから、けっこうツッコミどころ満載だった。
アメリカ帝国主義イスラム原理主義の戦いっていっても、結局は下々の人間レベルで命を削り合うことになる。その不条理がやるせない。土壇場で互いにそれぞれの神に祈っても叶わず死んでいくんですよ。無神論者のバカで良かったよ。宗教絡むとみんな殺しあうじゃん、とバカは思うのだった。
映画の話に戻るけど、そろそろ風化していた9.11を再認識させたことは良かったと思うが「WTC」も含めてハリウッドの商魂はやっぱりすごいや。危険な娯楽映画ですよ。
(☆4つ)