ヒストリー・オブ・バイオレンス(ネタバレあり)


久々に見たクローネンバーグ。昔から好きで「デッドゾーン」とか「戦慄の絆」とか大好き。アカデミーとは全然関係ない変態映画「クラッシュ」では、事故現場からゆっくり引いていくカメラに鳥肌立ったもんでした。
近年では「イグジステンズ」の安いグロ趣味にガッカリして、次の「スパイダー・・・」を見逃していたのでほんとに久しぶり。
冒頭の長回しでゆっくり横移動するカメラの冷めたテンションがたまらない。車をクレーンで俯瞰するところとかも絶妙です。そして例によってのハワード・ショア。やっぱりクローネンバーグはかっこいいです。
今回は近未来SFとかじゃないから「造形物」は出てこないと安心していたが、そこはやっぱり大先生。裂けた傷口とかつぶれた顔とか飛び散る脳とかキッチリ見せてくれます。暴力描写の力感がすごいです。「指輪・・」のヒゲづらの方がよっぽど優しそうだったヴィゴ様は、ヒゲがないとまじで怖い顔です。返り血浴びた時の表情は亀田三兄弟でもタオル投げます。
あとエロね。パンツのはがし方とかすんごくエロい。「衝動」という言葉をそのまま映像にしたような絡みは素晴らしかったです。頭でっかちになってダラダラと長い前戯に頼る中年オヤジは大いに反省すべきです。
だいたいなんの解決も見ずに救いのないラストで終わることの多い大先生ですが、今回は少しはマシかも。いや、あれでも十分冷えびえとはするんだけど、暴力のカタルシスがまさっちゃったところがあって、家族を背負ってる分、ヘンなヒロイズムというか、自分の望んでいない方向に話が流れていっちゃいました。
それでもこういうクローネンバーグなら大歓迎です。エド・ハリスウィリアム・ハートの怪演も楽しかった。ようもこんな役受けるもんだ。いや演技は楽しいと思うけど、その落とし前でええんかい!?(☆4つ)