恋に落ちる確率

サスペンス仕立てだというので登場人物の名前をメモって謎解きに備えていたが、シモーネとアイメが同じ女優の二役に気付き、なにやら不穏な流れに、そのうち今までの前提がことごとくひっくり返される。もう謎解きとか関係ない。
序盤は「男と女」みたいにコラージュを積み重ねていくのかなと思うと、「スライディング・ドア」っぽく二股に分かれていき、さらにもっと壊されていって「去年マリエンバートで」に近づいていく。映画的文法が取っ払われていくのだが、それが逆説的にとっても映画的で楽しい。全てのことが起こりうるが全てのことは幻という、禅問答的な映画。
原題の「reconstruction」の通りに出会いと別れが再構築されていく。その刹那的な儚さが恋愛の美しさを引き立ててたまらなくイイ。
時おり使われる音楽がまた良くて、エレクトロニカぽいワンコードの繰り返しだったりクラシカルなストリングスだったり。
映像もざらついた粒子の粗いデジタルビデオぽい画で色の出方が儚いせつない!
配給会社はアフォな邦題つけて「“究極の選択”を巡る恋愛についての映画」みたいなオサレな恋愛映画ぽい売り方をしたが、そんな映画じゃなかった。いや、自分も恋愛映画期待したんだけど。たぶん監督の意図の半分もわからんかったけど、それでも十二分に刺激的で緊張感を楽しめた。「メメント」以来の感覚で見る映画じゃないだろうか。(☆4.5)