美しい夏キリシマ

とても静かな反戦映画。夏の農村風景は美しくても、そこに暮らす人々はそれぞれに心傷ついて終戦を迎える。
戦闘場面無しで人が死ぬところを一切見せずに理不尽な戦争の傷跡を見せた。ただ主人公の少年が疎開先の空襲で友達を助けられなかったエピソードは重要なトラウマだけにセリフだけでなくなんらかの映像で見せて欲しかった気も。
石田えり香川照之の濃い二人がまたいかにもな配役だったので浮いていたのだが、石田えりが川に入っていくシーンと家を燃やすシーンは良かった。特に茅葺屋根の民家が炎上するところはなぜかポール・シュレーダーの「白い刻印」を思い出した。もっと長回しして欲しかった。やっぱりどこかで決定的な“破滅”や“悲劇”を見たかったのだ。インパクトだけを求めるアホな自分。
WOWOWでやってたのを録画して2度見た。2回目はヘッドホンで聴いたので宮崎弁(都城弁?)も良く聞き取れて日常会話のやりとりが楽しめた。柄本佑君のなにげに普通なセリフ回しがとてもいい。彼も「殺してくれ!」と言い続けたのだが何の悲劇も起きず。しかし、平穏に生き続けることこそが悲劇なのだろう。繰り返して見るとじわじわと悲しさが増幅される映画ではあった。
「父と暮らせば」も見なければ。(☆4つ)