ディパーテッド(ネタバレあり)


人懐こいトニー・レオンの笑顔が忘れられないだけに、あれを上回るのは難しいと思っていましたが、なかなかどうして。

アイデンティティーの喪失感の深さはやっぱりシリーズ含めた「無限道」の勝ちでしょうか。生き残ったアンディ・ラウも3作目では妄想地獄に落っこちちゃうし。ハリウッド版は1話完結の難しさか長丁場の2時間越えでもまだ足りず、終盤は渡した手紙のオチも無く編集でブッタ切られた疑い濃いでやんすよ。 二人の幼少時代や警察学校でのエピソードがもっと欲しかったんですけどね・・。

それでもそこはスコセッシというか、例によってお気楽な音楽を垂れ流しにしつつも、容赦ない暴力描写を挟み込んだメリハリのつけ方はさすがでございました。最後のマット・デイモンは、やっぱりアメリカンなのか現世でキッチリ落とし前がついてしまいました。無限地獄よりは暴力衝動から破滅へと至るスコセッシ節に置き換えられたということでしょうか。

香港版がかなり好きだった自分ですが、スコセッシも好きなのでこれはこれでOKです。何かが乗り移ったようなディカプリオの熱演に泣かされましたし、ジョーカーまるだしのニコルソンの大芝居も楽しめました。デイモン君は演技というより設定と脚本で損してる感じ。

設定変えしてあった精神科医の二股恋愛はそれ自体は無理がありましたが、能面女ケリー・チャンを使ってとってつけたような香港版よりよっぽど情感に訴えるものがあり、ディカプリオに感情移入しちゃうと個人的デジャヴ感で猛烈に切なくなったのでした。「ラブシーンがチョー良かった!」と妻に言うとさすがに「なんでやねん?」とツッコミ入れられてビビリましたが・・。

香港版はベタな泣かせのメロディが暑苦しかったですが、こっちはストーンズやらオールマン・ブラザースやらロイ・ブキャナンやら、昔ロック少年だったオジサンにくすぐり入れるヒネリも良かったです。

帰ってすぐに香港版も見直しました。どっちもいいぞ!(☆4つ)