硫黄島からの手紙(ネタバレあり)


父親たちの星条旗」と比べるとやや感傷に流れたような印象。自分が日本人で感情移入しやすいからだろうか。
主演は渡辺謙よりも二宮和也というべきで、童顔で一兵卒のヘタレ・西郷に親近感を持って見入ってしまう。その分前作よりもやや普通の戦争メロドラマになってしまった感がある。
5日で陥落と思われていたところを30日以上も持ちこたえたゲリラ戦の真髄はほとんど触れられずにひたすら敗走を続ける中での混乱と死を描いた。しかし、実際は栗林中将の玉砕後にも数百人単位の兵士が生き残っており、水も食料も尽き自決も降伏も許されぬ状況で餓鬼畜生の地獄を続けたことは語られなかった。それなりに狂気と混乱が描かれるものの、やはり美化されたきらいが無くもない。ヘタレ西郷も生き残って、「プラトーン」のラストみたいな安堵感が漂うし。
それと、主要人物の栗林、西がアメリカ寄りなのをはじめ、反戦的なキャラも多いので至極真っ当な反戦映画になってしまっており、皇軍兵士の異常なメンタリティがあまり描かれないのも不満。
もちろん、大本営が援軍を遣さずに硫黄島を捨石にしたくだりはきちんと伝えているし、敵に敬意を表す者もいれば捕虜を撃ち殺す奴もいる、擂鉢山奪還を叫んだ伊藤が玉砕もできぬままみじめに生き残る様などはさすがイーストウッドというような冷静な不条理描写ではあったのだが。
(☆3つ)
それでも日米双方の視点から描いた2部作は見応えがあり、正直硫黄島の戦いを詳しく知らなかったのでとても勉強になった。日本人として知らなければいけないし忘れてはならない事だろう。