犬猫


すごく面白かった。淡々としているようでいて、画面構成などの演出はとても緻密に造られているように感じた。最初は「珈琲時光」みたいな小津系かなと思ったけど、意外にいろんなことが起こるし、ストーリーが詰まっていて中身が濃い。
セリフや演技だけは役者にその場で即興的にやらせてるんだろうか。テンションの高い榎本加奈子が必死にダウナー系に落とそうとしてるのが伺える。でもまだ演技しちゃってる。藤田陽子はいいね。これで本人の素が全然違うキャラだったらすごい。
プロの凄みを感じたのは西島秀俊で、もう絶妙というほかない。忍成修吾も含めてボケ的に受けにまわった男性陣の好サポートが光る。
なにげないやりとりから笑いを引き出すセンスもいいのだが、終盤ですずが寝ているところで、わずかに引き戸が開いて濡れた縁側と風で本のページがめくれるシーンはなんだか安らぎの中にも妙な緊張感があるいいシーンだった。ヨーコが犬と一緒にカメラから離れていく引きの画も絶品。ひとつひとつが印象に残る素晴らしいラストシーンだった。
最初に作った8ミリ版もぜひ見てみたい。(☆4.5)