Always 三丁目の夕日


泣かされた。
しかし真っ向直球攻めのようでいて、かなりヘンな映画。VFXとかいう時代考証バリバリの昭和30年代なCG背景と、狭苦しいセットの街にエキストラの人たちが必要以上に多めに入ってうごめいている不自然さ。おのずと寄った画ばかりになって息苦しい。
しかも泣かせるいい話のマシンガンで、10分に1回くらい定期的に盛り上がるストリングス入って波状攻撃のように泣かせモードになる。原作・西岸良平のテイストならゴンチチのアコギくらいでよかったのに。しまいには音楽盛り上がるたびに「またかよ」と苦笑。
だから映画としてはイマイチと思ったのだが、なぜかその度に涙が出た。昭和35年生まれのオッサンは見事に秘孔を突かれたかんじ。駄菓子屋の佇まいとか、湯たんぽの残り湯で顔を洗うとことか、力王たびとかディテールからして卑怯だ。
普通に暮らせることの幸せをひしひしと思い知らされる。観ている間、福島の叔父のシワだらけの赤ら顔が浮かんだり、子供の頃弟と遊んだこと思い出したり、妻との暮らしも実は幸せなのかもと思ったり。人情の機微の大切さに気づかせてくれる映画。
しかし、日本の行く末が見えない現代では、こんなノスタルジーに酔っている場合じゃない、とも思う。特に家父長制的家族の礼賛は今更やって欲しくない、などとリベラルかぶれの元・朝日読者は思うのだった。(☆4つ)