サマリア(ネタバレあり)

罪の概念が重くのしかかる。儒教思想の韓国だが父親が語る話はカトリック神話からのものだろうか。タイトルからもキリスト教的な「赦し」や「贖罪」を思い起こさせる。
そうしたモラルがかなり欠落している自分は、援助交際からどうしてここまで崩壊していくんか理解に苦しむ場面が多かった。しかし後で思えば章ごとについたタイトルを追っていくと、天使のような「パスミルダ」、それを受け継ぐ善き隣人「サマリア」と納得できる。「ソナタ」は何だろう?「奏鳴曲」から拡大解釈して、共鳴とか調和とか→自然な流れの愛みたいな。
父親は監督の代弁者というよりは、古い儒教思想西洋文化・近代思想がせめぎ合う韓国の現状を象徴したものだろうか。
心中みたいな破滅的ラストを予想したのだが、意外にも二人がささいなふれ合いを経て「赦し」を感じさせるちょっとハートフルなラストになった。しかしそれぞれに“その後”を生きていくのは実に過酷なことであることは間違いない。
キム・ギドク監督はどこまでも醒めた視線で非情だったが、次世代に託す暖かい視線もわずかに感じられたのが救いか。
ただ、全篇に漂う宗教ぽさといい、クルマが二度も足を取られるメタファーみえみえのシーンとか、いまさらエリック・サティは無いだろうという音楽チョイスなど、文系頭でっかちぽい青臭さが少々鼻につきました。正直体育会系オヤジの頭はいろいろ考えるもののよくわからなくてオーバーヒートぎみだったのです。
(☆3.5)