シン・シティ


ロドリゲス+タランティーノというよりフランク・ミラーのハードボイルドなテイストが全面を覆っている。映像表現は斬新で面白かったが、とにかく「ハードボイルド」が不快。
ミッキー・ロークにしろブルース・ウィリスにしろ、寡黙なはずなのにベラベラと科白がうざい。アナクロな「男の美学」に酔っているナルちゃんぶりが気持ち悪いのだ。
たしかに、不利な状況を一人背負って闘うヒロイズムには正直きもちいい部分もある。イヤなのは“女を殴る男は許せない”とか言って、男は女を守るもの的な古臭い男らしさを公然と押し付けてくるところ。特にミッキーロークの役は見た目もメイクや増量で男らしさ50%アップ。粗野な肉体派でいつもくわえタバコ。情けなくなってくる。
こんなゆがんだ「男らしさ」は、家父長制を基にした家族単位で産業社会の労働力となるために欧米型近代社会以降が求めたものと認識している。つまり性差なんてその時代の社会が後天的につくったもので、子を産む機能を除けば無いに等しい。むしろあるのはそれぞれ個人の「人間らしさ」ではなかろうか。
みみっちいアイデンティティにすがって生きている姿はすごく窮屈。100人いれば100通り、いろんな性のかたちがあるのよフォーッ!それを認め合える世の中になればもっと豊かな社会になるのに、と思いました。
そういう意味ではデヴォン青木ロザリオ・ドーソンのキャラは良かった。デヴォン青木にはもっと斬りまくって活躍して欲しかったが・・。
やっぱり女を主役にして「ジャッキー・ブラウン」とか「キル・ビル」とか撮ってるタランティーノに比べて、「フロム・ダスク・・・」や「デスペラード」で男らしさムンムン臭いロドリゲスの方がより保守的なかんじ。なんか女に対してコンプレックスあるんじゃないの?
あと、イライジャ・ウッドが禁断の領域に踏み込んでたカニバリズムね。ルトガー・ハウアーのセリフでオオッと思わせるんだけど、それ以上はいかなかった。あっち方面に突き進んでくれるなら、それはそれでちょっと期待です。
(☆2.5)