アメリカン・スプレンダー


コミックが入ってきたり本物のハービー・ピーカーに入れ替わったりややこしい作りではあるけど、作為的な感じは少なくて自然なかんじ。印象的にはウェス・アンダーソンの「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」が似てるかな。でももっと淡々としていてポップさも薄い。使われている音楽がスローなジャズなのでなおさら渋い。
中盤までは笑わせどころ満載で大笑い。おたくっていうか変人ばっかりなんだもん。正当な意味で使う「やばい」人たちばかりです。
ピーカーはオタクというより偏屈な変人。意外と人に対して押しが強いし、ヘンな自信家。ポール・ジアマッティは「サイドウェイ」とは全然違う役作りで別のオタクを演じていた。ちょっとギョロ目やりすぎ。
7−3にきっちり分けてたトビー君に至ってはそこまでやるかのアブないキャラで、しゃべりがおもろすぎ。セリフに「NERDS」が入るたびに笑い出す。
終盤は自分のチンチンがガンになっての闘病生活から定年退職へのエンディングで、人生の哀感がしみじみと湧き出てきます。さえないオタクと言いながら3回も結婚できてるわけだし、金になってなくても原作コミックが売れて世に認められてるんだから十分充実した人生なのでは?この程度でダメ人間呼ばわりされたら自分かなわんで。
偏屈で悲観的で子供嫌いなはずのピーカーなのに、預かった子供を養子にして暖かい家族愛が描かれるところはホロリとさせる。でもやっぱり常にどこか孤独な影をしょってる感じがちょっと痛かった。やっぱり音楽のせいかも。サントラ盤ほすい。
奥さん役はホープ・デイヴィス。「ワンダーランド駅で」ではオサレなボサノバにのって恋のめぐり合いを演じた美女だったのに・・・。「アバウト・シュミット」でもさえない年増女だった。ずっとこれで行っちゃうの?(☆3.5)