サイドウェイ


あとでわかったけど「アバウト・シュミット」の監督だった。凸凹珍道中みたいな軽いノリの滑り出しながら、そこかしこで人生の苦さ酸っぱさを小出しにチクチクと。「アバウト・シュミット」は初老のニコルソンだったからまだ実感薄かったが、今回はど真ん中にビンゴな中年男。「バッド・サンタ」もサイテーだったけど、半ば世間からドロップアウトしてるダメ男。今回は普通な社会人なだけにより切迫感のリアリティが増している。自分は教師でも作家志望でもバツイチでもないが、人生も半ば過ぎて何も積み上げたものがないという痛すぎる心情設定はひとごとではない。自分も妻から三下り半突きつけられたら何も残らないだろう。実際、マンションの名義もカーチャンだし。
今回もわりと大雑把にペーソスを積み重ねておいて、時おりモードを切り替えて切なくさせる。音楽があからさまに繊細モードに切り替わる。この辺がずるいというか、アメリカンな大陸的おおらかさを感じる。
アバウト・シュミット」ではキャシー・ベイツの怪物的ヌードシーンがあったが、今回も中年男女があられもなく腰をグラインドさせるシーン2箇所。そのうち1回は男が文字通りのフリチンで路上に走り出す。さすがです。
オスカーノミネートのヴァージニア・マドセンは、演技というよりもうけ役すぎ。いい表情ばっか撮ってもらってる。これなら誰でも惚れるって。昔はセクシー系女優だったのにベッドシーン省かれてるし、終盤に伝言メッセージだけでウルウルしちゃったのも知的で優しいキャラ設定が刷り込まれちゃったせい。
こんないい女がダメ中年のポール・ジアマッティを好きになるのはいかにも唐突。ダメなエピソードばっかりで彼の良さがひとつも描かれていない。小説の内容誉められてもこっちには少しもわからん。
そんなツッコミはともかく、こんな痛い話を映画にしないで欲しい。こっちは現実逃避したくて映画見てるんだからさ。(☆4つ)