恍惚(ネタばれあり!)

Nathalie


(HP)
休み前の飲みがご破算になり、ヒマ持て余して一人寂しく渋谷ル・シネマへ。
6Fに上がるエレベータの中で素敵なお姉さんに「映画館は何階ですか?」と聞かれる。iPod聴いてた上に考え事してたから返事が3テンポくらい遅れた。しかも「あ、6階ですよ。」と答えるのみ。ダメじゃん。場数踏んだオトナならジョークのひとつも交えつつ一緒に入場して隣りに座るくらいできたのに。あっちからチャンスくれたのに。著しく悔やむ。てゆうか人畜無害の中年サラリーマンに見えたんだろうか。
映画が始まってすぐに後ろの男から肩叩かれる。「あなたの頭でスクリーンが見えないんですけど・・。」
あのね、普通に座ってるだけなんスよ。176の中年男が。それとも胴が長いと?頭がデケーと?この劇場、シートは小さいし、全体の傾斜もほとんどないので大きめな男の頭がことごとく突出する。設計ミスです。支配人にクレーム言いなさい。見えないなら前いけ!
かような不愉快状態の中で見た映画であるが、どうしてどうして、なかなか良かった中盤までは。
序盤、ジェラール・ドパルデューの出張浮気がバレる。なんか思い当たりまくりというか、ひとりビンゴというか。ウケまくり。いや、こんなにガード甘かったらオレなんか今頃血まみれだよ。って、そんなシチュエーションなのでおもしろくて興味深々。
そして絡んでくるエマニュエル・ベアールがすこぶる魅力的。寡黙でドライで反骨ぽい。金のためにやってるフリして内にエモーショナルな部分を秘めている。ファニー・アルダンとは歳も嗜好も違うのにどこか信頼の絆が生まれてくるところがいい。
ただ、言葉エロの繰り返しは萎える。訳もセンスがない。いまどきペニスって言うか?
どうしてもそこがしつこいのでネタバレして仕掛けが想像ついてしまう。
音楽は巨匠マイケル・ナイマンだが、メロドラマ丸出しなストリングスは合ってない。途中挟み込まれる各アーチストのオルタナニューウェイブ系の方がよっぽどいい。話がマイケル・ナイマンのレベルにまで深まっていかないのだ。
最後のオチはホントに期待外れ。いや、途中でもう確信してしまうんだけど、無事元のサヤに収まっておしまいってどーゆーことだ!ドパルデューには何の見せ場もなく刺身のツマ状態。ファニー・アルダンはすっかり落ち着いた大人の女を見せるけど、いかんせんキャラ設定に深みがなく夫に疑心暗鬼で精神的に自己中で幼いだけ。
良かったのはとにかくエマニュエル・ベアール。ときおりアップで魅せる儚げな表情がたまりません。演技というより彼女自身の魅力です。すごく危ういんだけど、その壊れるギリギリ感が素晴らしい。できれば全身ショットの素っ裸も見たかったがあれだけ痩せていてあの乳の大きさはちょっと疑惑アリ。
もうストーリー的にはあまりにヒネリの無い収め方にガックリ。おふらんす3大スターでエグゼクティブな夫婦設定とか破綻のないストーリーとか、ル・シネマそのものな映画だわ。やっぱオレにはフランスでもギャスパー・ノエとか、銀座シネパトスの場末感がお似合いってか。
あと、女二人が常にタバコ吸いまくりには閉口。タバコメーカーがタイアップに飛びつきそう。でもちっともオサレではありません。欲求不満に見えるだけですから。(☆3つ)