ハウルの動く城


枯れた老境どころではない宮崎センセイの独走・暴走。今回は鈴木プロデューサーも手綱を締められなかったのか。
とにかく話がいろんな方向にとっ散らかって収集がつかない。最後の安直なまとめにもあんぐり。キツネにつままれたような感じだった。もともと久石譲の音楽が嫌いなのにいかにもヒューマンチックな音楽繰り返し流されるのがまず嫌い。バアさんは唐突に若返ったり年取ったり。なのにオバサン丸出しの倍賞千恵子の声はそのまんま。青年の主張のスピーチを聞かされるようなまっとうなしゃべりにはまったく魅力がない。
何が鬱陶しいって、ソフィーは老婆にされてから活動的なキャラにはなったが、あくまで「常識的で控えめな女性」の一線を越えていない。過去の宮崎作品で見られた、女でも性差を越えて自力で状況を打開していくような力強さがない。
荒地の魔女(前半だけ良かったが)、カルシファー、ケンケンみたいな犬とかキャラの造形もどれも新鮮味がない。センスが古いとしか言いようがない。
あと、動く城の精緻な描きこみや動きの巧妙さは特筆ものだが、反面、随所で見られる火花や流れ星のような光の表現は手描きのしょぼさ丸出しでCGに完全に負けている。あれはなんとか工夫して欲しい。
自分の感覚ではほとんど共感できなかったが、意外に絶賛している人も見受けられる。思うに細かなディテールや辻褄にこだわるような人にはこの映画の良さはわからないのかも。宮崎監督も「次はもっと根源的なものをつくる」と言ってこれを作ったわけだから、ある意味やりたい放題な感がある。動く城や戦闘機の偏執狂的な作りこみや飛ぶシーンの連発、アニメーター泣かせなめまぐるしく動きの多い展開、ドロドロ好き、チューの大安売りなど、晩年の黒澤作品のような「幼児がえり」現象とも言える暴走ぶりだ。だからストーリーの洗練なんかより作り手のピュアな情熱がむき出しになって前面に出ているので、そこに共感できればこの作品もジャストミートできるのかも。
ちょっとフォローしちゃったけど、自分的には宮崎センセイも「終わっている人」斬りしてしまわざるをえないような作品だった。(☆2つ)