コラテラル

コラテラル


(HP)
(ネタバレあり!)
「アリ」をいまだに見ていないので久々のマイケル・マン。やっぱええわぁ。どっちかつーとツッコミどころの方が多いんだけど。マイケル・マン節が少しでも堪能できればオッケー。
クールなプロの殺し屋なのに、なんで行きずりのタクシー使うんだとか(初っ端で<トランスポーター>いてるやん)、サイレンサー使ったり使わなかったりとか、目立つ窓割れタクシーを使い続けるとか、とにかく落ち度ありまくりのトム君なんだけど、一番の落ち度は嫌がって反撃までするジェイミー君を使い続けたこと。最初の殺しがバレたときに殺さないのも不自然だし、病院から逃げ出してターゲットの資料を捨ててしまったときにも絶対始末すべきなのだが、それでも生かしているということは逆にマックスに何かしら共感していることになるのだが、そのあたりのきめ細かい心理描写が足りない。
大好きな「ヒート」では、ダイナーでデニーロとパチーノが向かい合って「ワシ、プロやから絶対譲らんでぇ」と静かーにメラメラしたシーンが堪らなかった。ああいう会話での駆け引きを期待したんだけど、オープニングで客の身なり・言動から職業を当てたシーンが活かされずに、いきなり殺し屋がバレるし。<男の駆け引き>が心理戦ではなくアクション主体(しかもターミネーターだし)になってしまったのは残念。ま、「ヒート」も同じなんだけど。こっちはプロ対ド素人なんよ・・・。
言い訳すれば、たぶん製作体制のおかげでしょう。巨匠といえどヒットしなけりゃホサれるこの世界。昔はプロデュース、監督、脚本ひとりでやってたのに、今回は脚本は他人任せで共同プロデュース。売れ線に仕上げるためにアクション派手にして終わり方も・・(以下自粛)。いつもより並のハリウッドぽいのはそのせいと思いたい。
あれこれとホコロビを正当化した上で良いところを挙げると、まずはLAの夜をクールに切り取った撮影。ふつう、夜の市街地走行シーンだと路面に水を撒くんだけど、それがなくてもアングルを工夫して街の灯りを映りこませてる。ヘリの空撮もクール。そして車内では高感度なデジタルビデオを使ったらしくて、わざとらしい車内下部からのあおり照明がない。おかげで二人の背中越しのやりとりがリアルでスリリング。
それからやっぱりトム様の演技。クールなふりしても役作りに没頭してるのがバレバレな熱演だけど、そこがスキ。やっぱり華があるというか、マイケル・マン映画にふさわしいケレン味を出してくれました。ジェイミー扮するマックスは真面目なヒューマニストなのでヴィンセントとは最後まで噛み合わないのだが、ヴィンセントの方は一方的に求愛してる感じ。マックスが走行中に狼だかコヨーテを守ろうとして急停止するシーンから決定的になり、以降は相対的にヴィンセントの孤独がいっそう引き立つ構図になる。狼ちゃんに向けた愛をオレにもくれ!と。なんかホモ映画ぽいぞ。
ラストは前半で布石となったセリフで締めくくられて「ブレードランナー」か「あしたのジョー」かという○○ざま。でも最後の最後はマイケル・マンぽくなかった。やっぱりあの女検事の絡ませ方はヘン。絶対作ってる最中に横ヤリ食らったと思いたい。(☆4つ)