白いカラス

白いカラス



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よくわからない映画だった。
アフリカン・アメリカン(黒人と呼ばれる方々)が見たらアイデンティティを傷つけられたようで不愉快なのではないだろうか。コールマンの付き合ってきた女は白人ばっかで、最後に告白はするものの、フォーニァに対してだけで家族や大学への落とし前がついていない。終盤いつの間にか作家の視点に変わってしまい、二人の最後の恋のゆくえが放り出されたような肩すかしのされ方。

最初に事故シーンが出てきて、「21グラム」のような時制錯綜パターンなのだが、丁寧に解きほぐされるべき心情や過去が簡単にセリフだけで片付けられたり唐突な進行にとまどってしまう。

役者の演技はさすがの存在感だが、やはりミスキャストに思える。ホプキンス自体はもろ白人に見えてしまうのは仕方ないとして、回想シーンだけでなく現在の生活でも隠しとおす苦労や葛藤をもっと織り込むべきだったのでは。メイクやつけ鼻などなくても演技でそれ以上に見せることのできる人だと思うので脚本の描き込み次第ではもっと説得力が増せるはず。

キッドマンはとても学歴のない(原作ではそうなってるらしい)女性には見えない。夫の暴力など回想シーンがないので見せ場少なくかわいそう。そのかわりに唐突なハダカと取ってつけたような喫煙シーン。明るく幸せいっぱいな人だってタバコ吸うんですよ。ステレオタイプな小道具の扱いはいいかげんにしてって感じ。

文句言ったけど、映像や音楽はなかなかに良くて、回想シーン(若いとき)のラブシーンも良かった。ああいう脱ぎ方は大好きです。逆にキッドマンはベッドで全裸で横たわるより立ち姿の背中で語って欲しかった。二人が車から部屋に入るまでの駆け引きの間の取り方も絶妙だったし、その際キッドマンが背中の表情でコールマンを引き寄せていたので部屋の中でも同様に背中で語って欲しかったのだ。

字幕を追うのに精一杯でラストの残された二人の含みのある表情を見逃してしまった。セリフを読んでもよくわからなかったし。原作は名作らしいのでそれを読めばナゾが解けるのかもしれないが、たぶん僕もフォーニアと同じく読み書きに疎い人間なので本を読むこと無く死んでいくのだろう。
(☆3つ)